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からあげはあたため直さなくていいよ(ふにゃふにゃになるから)

アルツハイマー型認知症の祖母の介護を終えて、一人暮らしをはじめた孫の日記

外套

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外套

よく覗く古着屋さんでついにトンビコートを見つけてしまった。ずっと憧れていて、いつか着てみたいなと思っていたもの。買えなくはないけれど(薄給の身の上なので)買ってしまったら今月の暮らしがかなり貧相になってしまうお値段。「とりあえず、着てみましょう」と言う店員さんにあっという間に着せられてしまう。これ、ひとりでちゃんと着られる? と思うようなフックとボタン。最初の持ち主は他人に着せてもらうのが当然の身分の人だったのではないか。そして、重い。でも、コートは重ければ重いほどいい、と思っている(毛布も同じだ)。その重みに安心さえする。で、購入してしまった。

今よりうんと昔、何十年も前に、どこかの裕福な男性が仕立てた上等な品物ではないかとのこと。けれど、今は低賃金労働者のわたくしのもの。外套も「なぜわたしがこんな貧乏人のところに」と思っているかもしれない。ごめんね。

店員さんに「とてもいい品物だから、これは一生ものですよ」と言われ、手渡される。着るとさほど重みを感じないのに、ビニル袋に入れて手で持つと異様に重く感じる。一生もの、という言葉も相まって、とんでもなく重い。わたしは、このひとのことを一生大切にしていけるのかしら。なにかがあったとき、このひとのためにポンとお金を出せるのかしら……。

時間を掛けてボタンとフックをかける。もちろんひとりで。少し大きいので、着た後にベルトを締める。はらはらとしていた裾がしゃんとする。かなり長さもあるので、踵のあるブーツを履く。鏡のなかで男性用の外套を着た自分の不安そうな顔。丸まりがちの背中をのばす。安心感のある重み。風を通さないからものすごくあたたかい。このトンビにみあう人間になりたいものだ……。




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