忍者ブログ

からあげはあたため直さなくていいよ(ふにゃふにゃになるから)

アルツハイマー型認知症の祖母の介護を終えて、一人暮らしをはじめた人の日記

ワンピースのほつれ


お気に入りのワンピースが数箇所ほつれてしまった、とデイケアから帰ってきた祖母に話すと、祖母は目をきらきらさせて「手で縫うのでよければ私が直してもいい?」と言ってくれた。お願いすると、早速祖母はワンピースを裏返してあちこち検分して、ここをこうしてこうする、あと時間はかかるけどこの処理をするといい、とわたしに話してくれた。前にも書いたと思うけれど、祖母は洋裁の先生をしていた人だ。ちなみにわたしには裁縫の才能が全くなくて、ボタンをつけるのだけでいっぱいいっぱいという有様です。







お茶を飲んだり、夕食の話をしたりすると「今何をしようとしていたんだっけ?」とワンピースのことを忘れてしまう祖母に、何度も同じ話をした。祖母もまた同じように、「ここをこうして…」と繰り返す。「じゃあそれでお願い」と頼むと、心底うれしそうな顔をして眼鏡をかけた。けれど、さっそく取り掛かろうとした矢先に針仕事の道具が見つからない。祖母は自分を責めはじめる。私の頭は馬鹿になったんだろうかという言葉を聞くたびに、とても、悲しい気持ちになる。結局針仕事の道具一式はわたしが発見して、祖母はさっそく作業にとりかかった。








祖母は黙々と作業をしている。その向かいで、わたしはぼんやりと薬の整理をしていた。ごはん食べる? と聞いても、手元から目を離さずに「まだいい」と答える。たぶん、作業が一段落つくまではだめだろう。わたしも自分のしたいことをすることにして、読みかけの本を開いた。








それからものの数分で、祖母が「できた!」とワンピースを掲げた。ワンピースはすっかり元どおりになっていた。「でもリウマチだから昔ほどうまくは出来ない。恥ずかしい」なんて言うけれど、わたしの目には「元どおりのワンピース」にしか見えなかった。ありがとう、と目を見て伝えれば、どういたしまして、とご機嫌な声が返ってくる。この人は数日前にわたしに怒鳴り散らしたり死にたいと言っていた人と同じ人なのだ。そう思うと不思議な気持ちになるけれど、それはわたしにだって、誰にだって当てはまることだなと思い直す。いろんな感情がごちゃまぜになって、それが立って歩いて思考して言葉を発する。祖母もわたしも誰もかれもが同じだ。








ワンピースは、少し前にアップした記事のワンピースと同じです。海外から通販したもの。祖母と一緒に選んだワンピース。またひとつ思い出深いものが増えてしまった。







たくさんの拍手ありがとうございます。
PR

コメント

プロフィール

HN:
tebasaki700
性別:
非公開

最新記事

P R