■可視化された怒り
職場で、(おそらくは)母親を怒鳴りつけている娘を見かけた。五十代くらいの娘は「気が狂ってんのか!?」「普通はよその人より娘の言葉を信じるだろうが」と強い言葉で母親を罵っている。母親の方は萎縮した様子で俯いている。 わたしには怒鳴る娘の気持ちが痛いほどよくわかったし、怒鳴られる母親の気持ちも想像することができた。
わたしと彼女(娘)の違いはそんなに大きなものではないのではないだろうか。わたしと彼女を隔てる川のようなものがあるとしたら、それはすぐに飛び越えられるようなものに違いない。ちょっとした切欠さえあれば、わたしも彼女のように怒鳴りつけてしまうのではないか。
■隠された鞄
昨夜は祖母が鞄をどこにしまったか忘れてしまった。鞄の中には大切なものがたくさん入っていた。昼間一緒にいた母に訊いてみようと思い電話をかけたけれど、「昼間ばあちゃんと一緒にいてものすごく疲れたって言ったのに、なんでこんな寝る直前の時間に電話をかけてくるんだ」と怒られてしまった。鞄をなくしたのはわたしじゃない。この時間まで気がつかなかったのはわたしの過失かもしれない。でも、毎日ずっと祖母といて、疲れているのはわたしだって同じだ(むしろわたしの方がずっと長い時間祖母と一緒にいる)。そう言いたかったけれどただ謝った。悲しかった。 母はすぐに電話をかけ直してくれた。さっきはイライラしてひどいことを言って申し訳なかった。そう謝ってくれたのに、わたしはちゃんと対応できなかった。露骨に苛立ったまま話してしまった。なんでこういう風になってしまうんだろう。
鞄は、クローゼットの中、黒い上着をかけてしまわれていた。最近お財布や鞄をこうしてしまいこんでしまう。そしてしまったことを忘れてしまう。いつか、わたしが盗んだとか、そういう話になるのかもしれない。とりあえず今はそうではないので、あまり考えないようにはするけれど。 とりあえず、あまり母に頼るのはよくないな、と思う。今日のはかえって心配かけるだけの電話だった。反省しきりです。
■仕事終わりに
新人さん(わたしも経験者とは言え新人であるが)に少しだけ話しかけた。レジのこととかは教えられないけど、担当ジャンルのことで分からないことがあったら気軽に訊いてね、と言った。仕事で付き合う人たちにするように、にこにこ笑って、気さくに話せればいいのに、でも家族はそうはいかない。いろんなしがらみと甘えとがごちゃまぜになってしまう。
昔のことを思い出す。アルミホイルで包まれた、海苔で覆われた黒いおにぎり。俵のかたちをした味噌おにぎり。祖母や母が作ってくれたおにぎりをおいしいと言って食べていた頃のこと。思い出すと涙が出てきてしまう。どうしたらいいんだろう。