■草舟を漕いでいる
祖母の機嫌がこのところ非常によろしくない。
当たり散らされたとき「一番つらいのは祖母だ」と思おうとする。というか、思っている。それでも苛立ってしまう。いい加減にしてくれと思う。
数分後、祖母はもう苛々をぶつけたことすら忘れてケロっとしている。話しかけてきたり、テレビのなにかを「ほらおまえも見てごらん」と言ってみたりする。そういうとき、わたしは祖母のテンションに自分のテンションや気持ちをうまく合わせることができない。そっけない態度をしてしまった後、ああそうだ祖母の世界では「そんなことはなかった」のだから、こんな風にしてはいけない、と思う。それでもうまく合わせられない。
祖母の感情は荒海のように激しく変わる。機嫌のいいときから突然「なぜおまえは結婚もせずこんなところにいるのか」という叱責が飛んでくる。どんなに丁寧に説明しても忘れてしまう。だから、もう説明しなくていいやと思ってしまいそうになる。
こんなことを書くと「なんてひどい人間なんだ」と思われそうだけど、もうそういう風に思ってもらって構わないです。それくらい疲れています。
■はやく死んでほしい
と思うようになるよ。そんなことを言っていた人がいた。その人は自分の母親を介護していて、わたしよりもずいぶん歳上の人だった(お母様はもう亡くなられている)。わたしの母は「そんなこと思うかな? ひどくない?」と言っていた。でもわたしはその人の気持ちがよくわかる。その気持ちだけが100パーセントの気持ちではないことは断っておきたい。いつだってそんなことを願っているわけではない。でも時々、考えてしまう。
■家に帰るのがつらい
仕事では後輩を指導することになり、そもそも自分自身がまだこの仕事に就いて日が浅いのに教えるも何もという感じだけれど、毎日教えられることを教えている。誰かの指導をしながらこなせるような仕事量ではないので、毎日あっぷあっぷしている。それでもなんとか仕事を終わらせる。帰りたくないなあ、と思う。足が重い。だからと言って実家に帰るわけにもいかない。祖母の家に帰らなくてはならない。はやく帰らなければ、明日の仕事に差し障りが出る。でも、帰りたくないのだ。こどもじゃないから、のたのたと帰る。電車の中でもう泣きそうになるのを我慢する。電車を降りてとぼとぼ坂道をのぼっている間に涙が出てくる。
こんな話は誰にも出来ないから、ここに書き残しておく。そう遠くない未来の自分は、これを見てどう思うだろう。きみが後悔していることは容易に想像できる。どうやったって、どんなにがんばったって、わたしもきみも、きっと後悔するのだから。